患者情報を核とした院内情報処理システム(AMRD)の紹介

株式会社ゲッツブラザーズ ASG事業部
E-Mail:あべ松 俊輔

1.はじめに
昨今の医療の現場では、医療費の高騰、高齢者の増加など、病院経営を取巻く環境は著しく厳しくなってきているのが現状です。また治療に対してはより高度な診療が求められ、且つコストを削減しつつ、患者サービスの向上を計って行く事が急務となってきております。
当システムは、循環器の専門病院に於ける院内全般(特に入院に係る)で発生する情報を一元的に管理し、転記、重複入力等の無駄な雑務を省き、且つ患者情報を一元的にデータベース化し管理を行なっていく事で、診療上の効率化と同時に重複検査等の防止、患者の永続的な診療情報が随時参照できるシステムを目指しておリます。また、院内の全員が簡単に使える事を前提に、技術的な側面としては、クライアント/サーバ形式から一歩踏み込んだIntranetの技術を使い、Mac、WindowsといったPCの違いを全て吸収するようにしております。

2.システムのコンセプト
当システムの基本コンセプトは以下の項目です。
(1)院内でのコミュニケーションの基盤の確立
ネットワーク・コンピューティングをベースとした情報伝達の基盤の整備ならびにペーパーレス化の促進を計る。[図−1を参照]
(2)患者情報の共通基盤の確立
将来の電子カルテを指向した入院サマリー,検査情報,オペ,処置等の全ての情報を維持・管理できる基盤を確立する。
(3)院内でのスケジューリングと実施情報
オペ,心カテ,CT等の各種検査予定をコンピュータ化し、それらの実施情報の管理が行なえる仕組み。
(4)処置,投薬等の院内オーダリング処理(現在開発中)
患者情報とリンクした、処方箋、注射箋、食事箋、など院内で発生するオーダ処理を確立する。
(5)医事会計処理とこれらの処理の連携(現在開発中)
2〜4項からの情報と医事会計処理とのリンクを確立する。
(6)関連病院との患者情報交換の仕組み
院外のDrとのコミュニケーションの仕組み(Internetを利用)

3.患者データベースを核とした各機能の関連
従来、カルテ、レントゲン・フィルムなどの患者情報に関しては、個々の科で目的に応じてバラバラに管理され、そしてそれらを関係付ける事は不可能に近い状態でした。当システムではそれらの情報を全てデータベース(DB)として登録し、且つ管理して行くことにより、全ての情報を一元的に管理が行えるようになりました。この考え方をDBの構造として表したのが『患者データベースを核とした機能の関連』[図−2]になります。又、ここで管理される情報の種類は以下の様に分類されます。
(1)数値,文章情報(検査データ,診療サマリー等)
(2)静止画情報(レントゲン、CT等)
(3)紙ベースの情報(古いカルテ、手書でしか表現できない情報など)
(4)動画情報(シネ情報等)
(5)音声情報
現在は(1)〜(3)までの情報を一元管理しますが、将来(4)(5)の情報についても同様に管理ができる仕組みを開発していく予定です。

4.ベッド状況から患者診療録を参照
入院患者の病室・ベッドの状況を病棟の全体若しくは階毎に表示するもので、現在の入院状況が一目で分かる機能です。[図−3を参照]病室については一人部屋から大部屋まで個々のベッドで管理されており、病室毎での入院予約も管理ができるものです。また、ベッド状況については、医事課、病棟、医局等院内で共通に利用される情報で、ここからは以下の処理が行えるよう設計されております。
(1)入院中患者の情報照会->診療録 [図−4を参照][図−5を参照]
(2)患者情報の入力
・患者入院サマリの入力
・過去のカルテ情報の入力
長年に渡る過去のカルテをデータ入力する事は、大変な労力と費用を必要とする訳で、当システムではイメージとしてカルテを保存し、入力は最低限の項目としております。勿論この情報も患者診療録のDB項目として扱われております。
・処置・投薬の情報、食餌、看護の情報(予定機能)
(3)病棟での患者情報の入力
(4)各種スケジューリングへの組込み[図−6を参照]
オペ/心カテ予定、検査予定への組込み
(5)ベッドの移動
(6)退院処理
但し、これらの入力処理はシステムにログインする担当者により異なります。

5.院内共通情報
イントラネットを利用した、院内・外メール及び院内でのWebサーバを利用した共有情報の活用を推進することで、紙ベースでの情報のやり取りを極力少なくし、且つコンピュータを使う便利さをアピールしています。また、啓蒙活動の一環としてWord,Excelのような一般のソフトウェアの教育も定期的に行っていく必要があります。

6.今後の課題
今後の課題としては、以下の事が考えられます。
・サマリー・データ等の入力方法の検討(特にDrが入力すべき情報の入力手段)
・可能な限り自動入力の方法を検討し、各種ME機器類との接続をおこなっていく。
・レセプト処理への連動

7.おわりに
一般の企業とは異なり、病院内の情報システム構築には様々な乗り越えなければならない障害があり、特に院内全員のコンセンサスを取り付ける事の難しさを痛感します。このシステムは院内で最も共通した、且つ重要な患者情報に焦点を当て開発されており、従来の紙ベースの情報伝達・指示の形態からネットワーク・コンピューティングを前提(道具)とした業務処理の流れ及び治療に係る情報提供を行なっていくことです。そして、医療従事者全員がシステムを育てて行くべき土壌を形造るもので、院内での将来の処理方法に対しアプローチしていくものです。