メリッツ「メディカルステーション」と
電子カルテ操作環境改善について

木村 公憲1)
1)きむらクリニック



1.きむらクリニックの電子カルテの構成
2001年4月2日に開院した、きむらクリニック(北九州市小倉南区)では、BML100%出資子会社のメリッツが開発した、「メディカルステーション」を使用している。
構成は以下の通り。
1)サーバー1台(OS込み\424,200)
clock:1GHz memory:512Mb HDD:45G×2

2)クライアント3台(OS込み\196,000)
clock:800MHz memory:256Mb HDD:30G

3)周辺機器
・ディスプレイ:液晶15インチ3台(\85,300),17インチ1台(\138,000)
・プリンター:レーザープリンター1台,他FAXと共用
・無停電装置:3台 ・ルーター:1台 ・ハブ:1台

4)ソフト
WINDOWS2000,MS OFFICE2000,PDF Righter Adobe Acrobat 4.0 WIN
遠隔操作ソフトPCANYWHERE ver9.2,SQLサーバー(5端末用)
Medical Station Ver.2.1&クライアント造設×2(\2,660,000)

5)その他:導入教育費(\800,000)
導入スタッフ5日間滞在、レセプト初回提出時スタッフ2日アシスト
 トータル\5,480,700→値引き後\4,700,000 + 保守サポート・メンテ料\50,000/月

当初は事務室に受付用(2号機)、サーバー兼受付非常時用(1号機)、診察室(3号機)、検査室(4号機)という構成であったが、導入後10ヶ月を経て、レーザープリンター1台増設、受付用にサーバー(1号機)を充てている。
4号機はアシスタント入力用として、診察用3号機の隣に置いている。また、ネットワークで内視鏡室のパソコンとつながっていて、診察室で内視鏡データが閲覧できるようになっている。


2.導入理由
メディカルステーションを選択した理由としては次のような理由からである。

1)所見ワードツールを使えば、キーボード操作があまり上手でなくても入力が出来る。
2)検査センターを持っているBMLなので、検査データが迅速に電子カルテに取り込める。
3)バグ取り等を行った修正版を無償で提供してもらえる。
4)カスタマイズを綿密にやってもらえる。
5)NTTデータのSecureSealを使って、電子カルテの原本性と作成日時を証明することが出来る。


3.メリッツについて

・メリッツは1989年3月にBMLシステム部が独立、BML100%出資子会社として発足。
・川越の本社に開発30名、導入・サポート30名、電話サポート20名、インストラクター80名。
・札幌と福岡に導入サポートやインストラクターを計40名ずつ配置。


4.メディカルステーションについて

・MAC用電子カルテWINEと繋げられるレセプトコンピュータ開発に1997年夏に着手したが、独自開発は止め、1999年4月よりレセコン部分は油井の「ドクターソフト」、U・Consultingをエンジンに用いて、電子カルテとして開発を再開。
・2001年4月25日東証一部上場のための戦略的商品と位置づけられている。
・2002年4月上旬の時点で出荷数約400。受注数約900。
・福岡県での使用数は14


5.販売組織

・全国のBML社支店で、地区担当者が個別にクリニックを訪れ、セールスを行っている。
・デモ時には、インストラクターが来訪してプレゼンテーションを行う。


6.サポート体制

・川越の本社に導入・サポート30名、電話サポート20名駐在。リモート操作でサポートしてもらうことが可能。
・各地区(九州ならば福岡市)にメリッツ協力会社があり、そこからサポートに直接来てもらうことも可能。


7.メディカルステーション固有の問題と解決方法

・処方箋欄が実際はレセプトになっているため、do処方が出しにくい。
・処方箋が「薬名」「用量」「一日使用量」「飲み方」「投与日数」の、一般的な医師が見慣れた順番になっていない。
→油井の「ドクターソフト」、U・Consultingをエンジンを使用しているため。
レセの部分は隠して表に出て来ないようにし、別テーブルで処方欄を構築すれば良い。
あるいは、ORCAなどをレセの部分に使用する。

・過去カルテを参照する際、5回より前を出すのが面倒。過去カルテが、紙カルテより見にくい。
・画面上にいろいろ立ち上がりすぎて煩雑。
・クィックテーブルと検索用画面に同じ様な内容が並ぶ。
→画面レイアウトなどの洗練が必要。

・改行すると2号用紙部分では、1行間が開いてしまう。Shiftキーを押しながらリターンキーを押さなければならない。
・一度開いたカルテを再度立ち上げると、カーソルがメモの所に行ってしまう。
・印刷すると、診療録が1診療回に対して1ページ使用する。
→設定部分を修正すれば可能と思われる。

・薬剤→薬剤入力の様に、2度もクリックしたり、クリックする場所が離れていたり、マウスとキーボードの間を往き来することが多い。
・内服薬期間をいちいちカレンダーを使用して入力しなくてはならない。
・病名終了日を入力するのに、カレンダーをクリックして入れなくてはならず、面倒。
・内服、頓服の最初のチェックを入れ間違うと、全部入れ直さなくてはならない。
・「指導管理料」が「診断」の項目に入っていたりして、医師がイメージするものとかけ離れている場合がある。
→開発者がプログラマの立場で頭で考え、設計レイアウトを行い、試用時に電子カルテに詳しい
医師に見て貰っていなかったのが原因。

・厚生省マスタに準処しているため、「セルシン錠5mg」は「5mgセルシン錠」と登録名がなって
いて、頭3文字しか検索出来ないため、検索が困難。
「ニューロタン」は「にゆろ」と入力しなくては検索できない。
→マスタはマスタとして残し、検索名称を新たに登録する。中間一致検索が出来るように改善する。

・ATOKが使えない。
・データはフロッピーを介して医師がマシンに落とさなくてはならない。
・所見ワードツールは、ブラインドタッチに慣れた医師には無用の長物。
・価格と保守料が高い。


9.電子カルテとしての問題点

・代診に頼みにくい。
・医師に電子カルテ操作の負担がかかる。
・細々とした指示と初診の多い内科では、一人平均5分以上の平均所要時間。つまり午前中3時間で36人が限界。Do処方が増えれば効率が上がるが、本年4月より長期投与が可能となり、Do処方の数が減ると思われる。
・統一された規格やプロトコルが採用されていないので、データ互換が簡単ではなく、メーカーが異なると他院の電子カルテで開くことが難しい。
・ネットワーク的にダウンしてしまった場合、復旧が困難。
・地域医療ネットワークに対応させるには、現時点では地域医療ネットワークシステムを立ち上げ、そのサーバーへダイヤルアップ接続する方法がメインで、料金が安く常時接続が可能で高速なインターネット接続では、セキュリティーシステムに問題がある。

10.電子カルテの問題点の解決方法

・診察をする医師の横に秘書あるいはクラーク的専従スタッフを置き、アシスタント入力してもらう。

(図1)左右に同じ画面が開かれている。


(図2)スイッチの切り替え一つで、別の画面で別の作業が行える。


(図3)実用新案出願(申請)番号:実願2002-1344

・医師はカルテの記入、処方や注射薬の記載および検査指示と、do処方などのチェックを行う。
病名や開始日、終了日もアシスタントに入力してもらえるようにする。確認はペンタブレットなどでサインするか、指紋照合などの電子署名システムを使用する。
・ネットワーク的にダウンしてしまった場合、データバックアップディスクをサーバーより取り出し、医師用のパソコンを臨時サーバーとして入力作業が出来るシステムに切り替えが出来る様にする。復旧したら緊急避難データをサーバーに送って、データを整理照合、再構築する。
・統一した規格、プロトコルを決め、強固なセキュリティーシステムを開発する。
・手入力検査データ(検尿など)等も専従スタッフに任せるが、処方箋打ち出しまで診察室内で行えるので、窓口業務担当事務は一人で済むというメリットがある。