OCHISネットワークの取り組みと今後

大嶋 比呂志1、 武田 裕2、 楠岡 英男3、 松岡 正己4

松村 泰志2 松波 康二1 鰐川 正貴1

 

1. NPO 大阪ヘルスケアネットワーク推進機構
2. 大阪大学医学部附属病院
3. 国立大阪病院
4. 松岡診療所



1.OCHISの現状

平成12年度補正予算による大阪地域のネットワークの開発・実証事業であるOCHIS(Osaka Community Health Care Network System)はASP型電子カルテと既存電子カルテをネットワークで つなぎ、XML(J-MIX)を利用した診療情報提書の連携を実証した。 ASP型電子カルテは、ADSLを利用したネットワーク下では、実行性能等に問題もあり、今後の光回線を利用したネットワークの利用等に向けて検討中であるが、診療情報提供書の連携は現在も利用中であり、今後もさらなる発展を目指している。 現状のOCHISネットワークを下図に示す。

 

図1 OCHISの全体構成

2.平成14年度のOCHISネットワークの活動

平成14年度にOCHISは下記項目の変更と活動を行った。

  1. ネットワークのインターネット化
  2. OCHISを運営するNPOの設立
  3. セキュリティシステムの実証実験

(1)ネットワークのインターネット化

OCHISは平成13年度は地域IP網を利用したシステムとして構築したが、これはASP型電子カルテのためであった。診療情報提供書のネットワークはSSLを利用した認証、暗号化が行われておりインターネットを利用することにたいして、回線経路のセキュリティ上の問題はクリアーされていたため、平成14年度よりはネットワークにインターネットを利用する形態とした。 これにより各診療所・病院で、インターネットと別に地域IP網の回線が必要であった(参加されたすべての医療機関がインターネットを利用していた)ネットワーク接続回線も、インターネット回線のみで利用可能となったとともに、大阪府内のみに限定されたサービス地域が全国に対して可能となった。 これに伴いOCHISはOrganization for promoting Community Health Information Systemsとし て、より発展したサービスを提供可能となった。

ただし、各医療機関は自己責任でインターネット接続中の外部からの不正アクセス等に対する対策が必要となった。

(2)OCHISを運営するNPOの設立

OCHIS運営母体としてNPOの設立を計画し、平成15年2月に認可され特定非営利法人大阪ヘルスケアネットワーク普及推進機構としてOCHISの運営を行う母体が設立された。 現在大阪大学医学部附属病院医療情報部の武田教授を 代表者とし、正会員13名の組織としてOCHISネットワークの普及・推進活動を行っている。

(3)セキュリティシステムの実証実験

OCHISのセキュリティは下図の通りである。 平成14年度MEDISの公開鍵基盤(PKI)の公募に採択され、ヘルスケアPKIの実証実験を行った。 OCHISにおける実証実験の主要な目的は電子署名の実証であり、将来診療情報提供書が電子的な媒体(通信を含む)で認可されることを想定して、その場合の署名のあり方の実証実験であった。 この実験は成功裏に完了し、RA、CA等の持つべきポリシー、運用規定、運用モデル、コスト等実証によって多くのフィージビリティスタディを実施するとともに、TSA( Time Stamp Authority )の実証できたため、OCHISとして電子署名による診療情報提供書の連携が認可された場合への準備を完了した。

署名の実証はMEDISのsubCAより発行されたhcRoleに基づく公開鍵証明書署名による署名により行った。

図2 OCHISのセキュリティ

3.OCHISの今後の計画

本年度よりOCHISは本格的な有償サービスとしてスタートする。 その準備として現在会員企業に依頼している運営管理を大阪府のIDCに移設し、CA局OopenSSLよりCertMistyに変更することにより強固なシステムに変更する 予定である。 基本的なセキュリティシステムはSSLによる認証とXML署名(enveloped)と参加各機関(センターも含む)のファイアーウォールによるものであり変更はない。 ただし、有償サービスに向けて、より強固な物理的セキュリティ等 システム全体の強化を行うとともに、平成14年度に実証した汎用コンテナシステムの提供等のサービス強化を行う予定である。現在大阪地域において参加希望を表明された医療機関、問い合わせを行った医療機関も増えつつあり今後の発展と補助金に頼らない自立的運営を目指している。 OCHISの持つPKIは様々な医療データの連携に利用可能であるばかりでなく、電子カルテの真正性確保において公開鍵証明書とTSAを利用する方法は極めて有用であると考えられ、この分野における利用も今後の課題である。

将来OCHISは地域におけるヘルスケアの情報連携の中核として発展させていきたいと考えている。 OCHISの将来図を下図に示す。

 

図3 OCHISの将来

OCHISのホームページは http://www.ochis-net.jp/ にある。