EHRの展望」

JAHIS特別委員 長谷川英重


 

個々の医療機関をベースとした電子カルテの導入は、(1)平成13年12月の厚生労働省「保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン」で平成18年度達成の5年間の目標が示され、普及のために平成13,14年度の補正予算で241病院への予算措置を始め多くの支援が行われました。また(2)並行して電子カルテ推進の基盤となる医療用語やコード体系について(財)医療情報システム開発センターが、社会保険診療報酬基金等と連携し、平成15年度までに、病名、医薬品、検査等の9分野のマスターを開発しインタネット上から無償公開しておリ、(3)電子カルテを基盤とした地域医療ネットワークに付いては、平成14年度より、個人情報保護を前提とし、実際の診療に係る情報を専用回線で電子的に交換や共有をするモデル事業が推進され成功事例が示されました。またこの時期に合わせいくつかの先進的な取り組みも行われています。

しかし電子カルテ導入現場からは資金や使い勝手の問題も多く指摘され、このままでは初期の目標達成が危ぶまれ、平成15年から2年間にわたり厚生科研でC「標準的電子カルテの開発と環境整備」により、安価で有用性の高い電子カルテの導入推進を促進する一方、並行してDe-JapanII加速化計画に沿った厚生労働省の「医療情報ネットワーク基盤検討会」で電子保存の検討が進められ、同時に進められていた「個人情報保護法」や「e-文書法」への対応も含めた「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」としてまとめられました。

またこうした動きに対応し電子カルテ普及の観点から、経済産業省の既存のシステムとの接続を容易にするE「医療情報システムにおける相互運用性の実証事業」が平成16年から19年までで開始されています。

このように電子カルテの普及に関してかってない取り組みが行われていますが今のままで、国内にあまねく電子カルテを普及し、患者安全、質の向上やコストの削減といった緊急の課題に対応して行くことは可能でしょうか。

欧米先進国でも医療改革は国の最優先課題の一つとなっており、多くの国では10年間をかけた国家プロジェクトとして進めており、特に米国は昨年来アポロプロジェクト以上のプロジェクトとして国を挙げて取り組んでいます。医療は国の文化、慣習や制度によって異なると言われていますが、ITを最大限に活用し標準にもとずき国を挙げて取り組もうとしている点は共通しています。

日本のこれまでの進め方をまとめ、欧米先進国とのベンチマーキングを行い、これからの進め方のヒントを皆さんと一緒に考え今後の展望を一緒に探ってみたいと思います。