ASP型電子カルテを活用した地域医療連携 “PLANET”

山田 剛士(やまだ たけし)
医療法人鉄蕉会 医療管理本部 カスタマーリレーション部 部長補佐


はじめに

亀田総合病院ならびに亀田クリニック(総称:亀田メディカルセンター)は、1995年に電子カルテシステムを病院全体で本格稼動させた。稼動当初より、診療情報が地域医療において活用されることが重要であると考え、1996年には、亀田メディカルセンターと十数ヶ所の医療施設との間をISDNにより回線接続し、カルテ情報の提供や診療予約のシステム化など地域医療情報ネットワークの構築に前向きに取り組んできた。平成13年度には経済産業省の電子カルテ・モデルプロジェクトとして選定され、インターネットとWebブラウザによる医療機関間のネットワークへと発展させることができた。但し、本来中心であるべき患者さまが、ネットワークに参加できていないという点を課題と考え、平成14年度は厚生労働省の地域診療情報連携推進のモデル事業について申請し、インターネットを活用して患者さまが自宅などからカルテの参照や自己記録を入力できるネットワークの構築に取り組むこととした。まず、患者さまがご自身のカルテ内容を参照、活用することについてどのようなニーズがあるのか、ネットワーク参加医療機関内でアンケート調査を実施した。約4000名の患者さまにアンケートを配布し、約2000人から回答を得ることができた。この中で、「カルテの内容を見たいか」という質問に対しては、87%の方が見たいと回答された。また、「カルテの内容の中で、何を見たいか」という質問に対しては、病名や症状(59%)、医師のコメント(35%)、手術や処置の内容(22%)が多く、薬剤の種類(20%)、検査の内容(19%)といった情報の提供だけでは不十分であるという結果を得た。また、「カルテの内容を見ることによってどんなことに使いたいか」という質問に対しては、健康管理に役立てたい(80%)、緊急医療時のために携帯したい(30%)と回答しており、PLANETにより患者さまの医療への参加に期待できると考えた(図1、2)。


図1(クリックにて拡大124k)



図2(クリックにて拡大92k)

 

PLANETの全体像

 PLANET運用を始めるにあたり、3つのWebサーバを構築した。先ずは地域の連携する医療機関(診療所等)へ電子カルテを導入するため簡便で安価なASP型電子カルテ採用した。本体のサーバは亀田総合病院内にASP型電子カルテサーバとして設置し、登録制により電子カルテの利用を可能とした。次に地域診療情報連携のための共有カルテサーバを構築し、双方向での情報参照を行った。その後患者参加カルテサーバを構築しPLANETの全体像を作り上げてきた。

 

PLANETの特徴

このPLANETは従来の医療機関間で行ってきた診療情報連携と明らかに違う点は、各医療機関で入力された診療情報がすべて患者さまの元に集まり、その情報は患者さまの意志により活用することができることにある。これにより患者さまは、気軽に他の医師に相談することができたり、ご家族に自身の病態を的確に伝えることも可能となる。また、慢性疾患等の自己コントロールの必要な患者さまにとっては、自身の病態をより的確に判断でき、自己記録機能を使い日々の状態も記録していくことができる。

 

PLANETの仕組み

登録された患者さま情報はすべて「患者さま参加カルテ」と呼ばれるサーバに格納され、患者さまはインターネットを介し、自宅のパソコンや携帯電話を利用し、参照することができる。また、自宅にパソコンのない方のために市役所や健康福祉センターなどの公共施設や参加医療機関、福祉施設、有料老人ホームなどにも参照ブースが設けられており、患者さまはそれらの場所で参照やプリントアウトができるようになっている。

一方、患者さまが入力した自己記録については、患者さまが権限を与えた医師の参照が可能でこれにより医師と患者さまとのコミュニケーションツールとしても利用することができる。

 

基本構成とセキュリティ

PLANETは、「患者さま参加カルテ」のアプリケーションサーバ、データベースサーバ、画像参照用の画像サーバと個人認証に必要な認証局サーバ、権限管理に必要なデレクトリーサーバ携帯電話からの参照用に携帯電話用アプリケーションサーバによって構成されている。これらのサーバ郡についてはすべて医療機関内のコンピュータルームにて管理されており、入退出管理やファイアウォールなどにより保護されている。また、通信途中の盗聴対策としてデータ連携はすべてSSLの暗号化がかけられている。そして最も重要ななりすまし対策として、登録された患者さまには証明書の格納されたICカードを発行し、PKIの個人認証を用いている。サーバへのアクセスがあるとまずその証明書が正規のものかを判断し、個人を特定する。また、医療の特性として必ずしも本人が参照するとは限らない(子供の診療情報を親が参照する場合や介護者や家族が参照する場合等)そのため、PLANET独自の権限管理により本人以外の方が参照する場合には事前に本人の同意を頂き参照者のカード発行の際参照権限を付加するという仕組みになっている。これによりいつ、誰が、誰の情報にアクセスしたかがすべてログ情報として管理される。一方、携帯電話においても(株)ドコモの発売したFOMAにはあらかじめICチップが内蔵されており、ドコモにファーストパスという証明書の発行申請を行うとそのICチップにドコモの証明書が格納される。PLANET側では、ICカードと同様にその証明書により個人を認証している。(図3)


(図3 クリックにて拡大116K)

以上

参考サイト

PLANETホームページ
http://info.planet.kameda.jp/

亀田メディカルセンター
http://www.kameda.or.jp/

株式会社アピウス
http://www.apius.com/

NTTドコモファーストパス
http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/firstpass/